日本の家が夏向きに作られてきた理由

昨日、今日と非常に暖かい敦賀市。今日も気温は10℃を超えています。でも来週の半ばからとんでもなく冷え込みそうですね。。。

寒暖の差が激しいですが、体調に気をつけていきましょー。

こんにちは。福井県敦賀市 イワイガラスの5代目 岩井達也です。

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健康な家づくりブログの第4話です。

前回は亡くなる人は冬に多くなる、でも北海道や青森、カナダやスウェーデンなどの寒い地域ほど、冬の死亡率の増加は小さくなると書きました今回は日本の多くの地域では、なぜ冬に備えた家づくりではなく、夏に備えた家づくりがメインになってきたのかを書きたいと思います。

“夏を持ってむねとすべし”と“寒さとの共生”

国語の授業で出てくる徒然草。作者は兼好法師ですね。兼好法師は鎌倉時代末期から南北朝時代を生きたといいます。西暦だとだいたい1280年~1350年。この徒然草の第五十五段に日本の家づくりについての記述が見られます。

家の作りやうは、夏を持ってむねとすべし。冬は、いかなるところにも住まる。

暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり。

(家を作るときは夏に住みやすい家を作りましょう。冬はどんなところでも住めます。

暑い頃に悪い家にいるのは堪えられません)

兼好法師

兼ちゃんお行儀悪いね

日本の風土は、夏は暑くて湿度が高いという特徴がありますね。夏を堪えられるような家づくりをしましょう、と兼好法師は書いたわけです。

家づくりを始める時に、『家は夏を持ってむねとすべしって言うんだ!』って大工さんや年配の方から言われたという人もいるのではないでしょうか?

しかし、この徒然草はあくまでも鎌倉時代のお話。いまから700年ほど昔の話です。当時は断熱なんてことは考えることもできず、自然に逆らわず、湿度や熱をこもらせない家、風通しの良い家を作る必要があったのです。第3話で書いたように、今は冬の家の中が危険な時代。言い換えるならこうですね。

家の作りやうは冬を持ってむねとすべし。

寒い比わろき住居は、堪へ難き事なり。

(家を作るときは冬に住みやすい家がいいよ。

寒い冬に悪い家はめっちゃ寒くてめっちゃ危ない。)

たつを法師

てへ

そして冬に屋外でする乾布摩擦や寒中水泳。これらは心身を鍛えるものとして古来から行われてきています。また、“温室育ち”という言葉は、あまりいい表現で使われませんし、“子供は風の子”なんて言葉もありますよね。なんとなく、冬の寒さが身体を鍛え、温かいところで育っては免疫力が低下して身体がなまってしまう、というような考え方があります。自然に逆らわず、寒さと共生するという考え方が、無意識のうちに現代の私達にもあるのではないでしょうか。

ですが、これって根拠がないんですよね。あ、乾布摩擦や寒中水泳を否定しているわけではありません。その後の考え方の部分です。次回以降に書きますが、近畿大学の岩前先生の調査で、寒い家から暖かい家に移った人の健康状態がよくなったというデータがあります。

これらから、『高断熱住宅に住むことは身体を弱くさせ、夏は暑い家に住むことになるから日本向きではない』という考え方が少なからずありました。人が集まる居室は、ストーブやこたつで暖を取れるし、寒ければ服を着込めばいい、という意見も多いです。特に断熱工事は外壁と屋内の壁の間や、床下に隠れてしまう工事です。『そんなことに力を入れるなら、もっと大きな家、もっとデザインのいい家を!』という考え方は、最近まで僕の周りでも多かったですし、いまだにそう考える人は少なくありません。

第2話でも書きましたが、僕も勉強を始めた5年ほど前までは、まさに上に書いているような間違った考え方をしていた1人。ですがLIXILさんの勉強会に参加して、近畿大学の岩前篤さんの講演を聞いて、やっと間違っていることに気がつきました。

何度も書いていますが、今は冬に亡くなる人が多い社会になりました。これからは冬に備え、冬の家の中で事故が起き難くなるような家づくりが必要になります。寒い家に住むとどのようなリスクがあるのか、暖かい家に住むとどのようなメリットがあるのか、こちらについては次回書いていこうと思います。

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